国立高専機構施設整備5か年計画
国立高専機構施設整備5か年計画2021
令和3年3月
独立行政法人国立高等専門学校機構
理事長決定
国立高等専門学校(以下、「国立高専」という。)の施設は、多様かつ優れた入学者を確保し、15歳入学から始まる5年一貫教育のゆとりある教育環境や寮生活を含めた豊かな人間関係の構築などを基礎として、専門的かつ実践的な知識と世界水準の技術を有し、自律的、協働的、創造的な姿勢でグローバルな視野を持ち、科学的思考を身につけた実践的・創造的技術者の育成や、これまで蓄積してきた知的資産や技術的成果をもとに、生産現場における技術相談や共同研究など地域や産業界との連携に引き続き取り組むとともに、Society5.0 で実現する社会・経済構造の変化等を踏まえ、高専教育の高度化・国際化を進め、社会の諸課題に自律的に立ち向かう人材育成に取り組むという国立高専の使命を果たすための基盤である。そして、その整備充実を図っていくことは、我が国を成長・発展へと導くとともに社会・地域、そして世界に貢献するものである。
しかしながら、国立高専の施設は、創設期である昭和30年代後半から40年代前半に集中的整備されたため、その多くが50年以上が経過し、老朽化が急速かつ一斉に進行している。この状況を放置すれば、学生の安全確保に重大な支障が生じるだけでなく、国内外からの優秀な学生確保にも困難を極める事態となる。
また、国立高専の施設は、高専高度化推進プランとして進めている「教育の質保証」「特色の形成」「国際化・情報化」への対応が求められている。
厳しい財政状況の中、これらの課題に適切に対応していくためには、長期的な視点に立って、その充実に向けて計画的かつ重点的に施設整備を行うことが不可欠である。このような観点の下、文部科学省では、国立大学法人等(独立行政法人国立高等専門学校機構、大学共同利用機関法人を含む。以下同じ。)の施設整備について、「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」(令和3年3月文部科学大臣決定)(以下、「国計画」という)に基づき、計画的な整備を進めることとしている。
以上のことから、国計画の基本的な方針を踏まえた上で、国立高専独自の施設整備に関する中期計画を策定し、本計画に基づき、計画的かつ重点的に施設整備を推進することとする。
1.計画期間
本計画の期間は、令和3~7年度とする。
2.基本的な考え方
(1)施設整備に関する事項
国立高専の施設は、教育研究活動が地域に近い存在であるという特徴を活かして、主体的な学びを創出する場と、地域・社会・世界との「共創」の場を通して、各国立高専が各々の特性を発揮し、51高専55キャンパス全体を「共創」の拠点となる「KOSEN コモンズ」への転換を目指すこととし、その実現に向けて、以下の考え方に基づき施設整備を推進していく。>
1)老朽改善整備の加速化
老朽施設を早期に改善するため、「戦略的なリノベーション」による機能向上と長寿命化を図り、既存施設を最大限活用する。ただし、既存施設の状況等により改修することが困難な場合は改築で対応する。
2)計画的・重点的な施設整備
国立高専の施設は、施設の老朽化、高専教育の高度化、国際化等の課題に的確に対応するため、「安全・安心な教育研究環境の確保」「高専教育の高度化への対応」「高専教育の国際化への対応」「SDGsへの対応」を重点的に進めていく。
そのため、引き続き「令和新時代高専の機能高度化プロジェクト」を着実に実施していくとともに、このプロジェクトの対象外になっている施設(体育施設、学生支援施設等)についても、順次整備に着手していく。
また、各々の国立高専の特色にふさわしい魅力あるキャンパス環境の形成に資する整備も実施する。
(2)施設マネジメントに関する事項
これら基本的な考え方に基づき整備された施設が、目指すべき教育環境を維持・確保するためには、総合的かつ長期的視点に立って施設の維持・活用に取り組む必要があり、施設全般に係る様々な取り組みを学校経営の一環として戦略的に捉える施設マネジメントを実施することにより、適時・適切な施設整備につなげる。
3.重点的に取り組むべき施設整備
(1)安全・安心な教育研究環境の確保
国立高専の施設が国立高専における教育研究活動の基盤として必要な機能と水準を確保し、これを維持し続けるために、防災機能強化に配慮しつつ、老朽施設を改善し、安全・安心な教育研究環境の整備を推進する。
経年劣化により安全性に支障のある基幹設備(ライフライン)は、防災機能の強化並びに事故の未然防止を図るとともに、教育研究活動の基盤として相応しい質を確保するため、計画的に更新を推進する。
教育研究施設はもとより食堂や学生寮等の日常空間を含め、換気や空調機能の確保、トイレの整備等「新たな日常」に対応した施設整備にも配慮する。
(2)高専教育の高度化への対応
「ものづくり」を先導する人材育成の場にふさわしい基盤的環境を整備するため、校舎、実習工場、図書館、学生寮を整備し、高専教育の高度化を推進する。
オンライン授業と対面授業の効果的なハイブリッド授業を実施するため、個別学習スペース等時間や場所に制約されない学習環境の整備と、アクティブラーニングスペースやオープンラボ等の日常的に学生同士のコミュニケーションが生まれる空間を活用して対面による深い学びの実現や信頼関係の醸成ができる環境の整備を推進する。また、デジタル技術や授業動画の利活用など、教育方法の変化に柔軟に対応できるよう、フレキシブルな使い方ができるスペースの整備やICT環境の整備も推進する。
学生が集う場、学生が成長する場であるとともに、地域交流・地域貢献の場として、防災機能も考慮した体育施設や食堂等を整備し、活用していく。
(3)高専教育の国際化への対応
日本人学生の国際理解向上を図るため、ダイバーシティにも配慮した日本人学生と留学生が共に住まう混住型学生寮の整備を推進する。
また、学生のみならず教職員の国際力の向上にもつなげるため、留学生や日本人学生、外国人教職員、日本人教職員等が活発に交流することができるためのスペースを整備する。
(4)SDGsへの対応
国立高専施設の整備にあたっては、ダイバーシティを考慮した施設整備を行う。
カーボンニュートラルに対応するため、平成28年度から令和2年度までの平均を基準として5年間でエネルギー消費原単位を5%以上削減するとともに、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」における建築物エネルギー消費性能基準よりも高い省エネルギー性能を目指した取り組みを推進する。
さらに、高効率型照明や省エネ型空調への更新、施設の高気密化・高断熱化等の取り組みを行う。
これらの整備については、現時点で建物整備(改修及び改築)約48万㎡、ライフラインの更新約78kmと想定され、一定の仮定の下に試算した場合の所要経費は約800億円と推計される。
4.推進方策
本計画の推進に当たっては、必要な経費の確保に努めるとともに、施設整備に係る投資の効果を最大限発揮させるために、以下の方策に取り組む。
(1)将来を見据えた魅力あるキャンパス計画の策定
各国立高専は、本計画の趣旨を踏まえ、長期的視点に立って、より効果的かつ効率的に施設整備を実施するため、各国立高専が策定しているキャンパスマスタープランを一層充実するとともに、当該プランに基づいた計画的な施設整備の推進に努める。
(2)地域・社会・産業界との連携強化
各国立高専は、日常から教育研究成果等について情報発信に努め、地域・社会・産業界との連携を強化する。
(3)施設マネジメントの推進
各国立高専は、総合的かつ長期的視点に立って施設の維持・活用に取り組むため、保有施設の総量の最適化を図りながら効率的な活用を行う施設マネジメントを推進していく。施設は経営資源の一つであり、施設マネジメントはトップマネジメントとして、各校長のリーダーシップによる全学的体制で実施する。
施設の整備・修繕、既存施設の有効活用等の施設マネジメント実施方策についてPDCAサイクルを確立するとともに、その取り組みを継続的に改善していく。また、良好で安全な教育環境を維持していくため、維持管理費等に必要な財源の確保に努める。
(4)フォローアップ
機構本部は、各国立高専の取り組みについて、必要に応じて技術的・専門的な支援を行うとともに、計画の達成状況に関するフォローアップを行い、国立高専の施設整備の推進に活用する。