祝賀メッセージ

高等専門学校創設 60 周年にあたって

国立大学法人 長岡技術科学大学 学長

鎌土 重晴

高等専門学校(高専)が創設 60 周年を迎えましたこと、心からお慶びを申しあげます。
高度成長期の所得倍増計画の実行には実践的技術者が不足するとの危機感から、昭和 37 年の高専創設には大きな期待が込められ、15 歳からの 5 年一貫教育で当時の技術者に必要とされる素養と専門的知識、更には実験等を通した実践スキルの習得に重点を置いた大学工学部レベルのカリキュラムがつくられ、多くの優秀な技術者が養成されました。その卒業生とともに産学連携の基盤が構築され、地域の活性化にも貢献するなど、その活躍は社会に大きな進化と発展をもたらしてこられました。その後も産業界からの要請に対応すべく、カリキュラムの弾力化や教育の質の保証等を担保するためのモデルコアカリキュラムの構築、専攻科の設置に伴うJABEE 認定の受審など、絶え間ない教育環境の改善に取り組み、常に創造力豊かな実践的技術者を育成し、卒業生の就職率は常に 100%と産業界からも高い評価を受けています。その粋となる実践的技術者養成教育システムへの海外からの高い評価が留学生の受け入れ増をもたらし、最近では海外にも高専が創設されるなど、高専教育システムは世界に羽ばたきつつあります。このように、国際社会からも信頼を築き、ここまで大きく発展された高専の姿は、高専を取り巻く関係者の熱意とご尽力の賜物であり、関係者の皆様に心から敬意を表します。

本学は昭和 51 年に人類の繁栄に貢献し得るような実践的・創造的能力を備えた指導的技術者の養成と実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う、大学院に重点を置いた工学系の大学として新構想のもとに設置され、大学の基盤となる学生の 8 割は創設以降一貫して全国の高専から受け入れてまいりました。高専との連携はこれ以外にも、連携教育プログラムや多岐にわたる共同研究の実施、教職員の人事交流など、幅広く積極的に行っています。近年は情報通信技術の著しい進展などにより社会構造が大きく変化する中、情報技術を活用した機器のリモート化を推進する機器共用化ネットワークを構築し、高専-両技科大間の強み分野を相補的に活かした教育研究の高度化、更には地域産業への貢献と魅力創りを一体となって推進しています。本学と高専は成り立ちから今日まで強い連携を維持しながら共に歩み、今後も本学は高専と共に未来に向かいます。

一方、世界に目を向ければ、人口は爆発的に増加して食料・エネルギー・環境等の様々な問題が顕在化しています。その解決には言うまでもなく、SDGs に資する、イノベーション創出を担う実践的・創造的能力と持続可能な社会の実現に貢献する志を備えた指導的技術者の養成が必須となります。更に SDGs 達成に向けた先進的研究・技術開発の推進を加速させるために、社会実装を通じて国内外の産業集積地域の持続的発展や魅力創りに繋げ、高専-技科大の連携・協働を一段と強化したいと思っております。今後、「高専が輩出した技術者達の紡ぐイノベーションが国際社会で明るい未来をもたらした」と評されることを願ってやみません。そして、新しい風を呼び起こす世界に類を見ない魅力ある学校群としてますます発展されますことを心より祈念します。本学も高専とともに、教育研究体の更なる充実に取り組み、世界の誰もが認める技術革新と国際競争力の向上に貢献して参ります。