卒業生インタビュー

「プライバシーテック」でデータ活用に安心を提供

LINE株式会社 マネージャー シニアリサーチャー

髙橋 翼

木更津工業高等専門学校 情報工学科 2005 年度卒

お仕事の概要を教えて下さい。
LINE は現在、国内だけでも 9200万のユーザーがいます。私は「プライバシーテック」(プライバシーに配慮しつつ機械学習や AI を用いてデータを活用する技術)の実用化に向けた研究開発のマネージメントを担当しており、また、個人としても基礎研究に取り組んでいます。プライバシーテックは領域が大きくないこともあり、大学など社外の有識者と議論しつつ研究開発を進めています。最近の顕著な成果としては、2021年から 2022 年にかけ、データベース系で世界最高峰の国際会議「SIGMOD」「VLDB」「ICDE」(三大会議)の全てに、論文採択を達成しました。また、機械学習分野でもトップ会議である「ICLR」に採択されました。
研究開発で心掛けている点はありますか。
会社にとって価値のある研究テーマを設定することを心掛けています。価値を理解してもらうためのデモや、勉強会の開催にも力を入れています。また、技術の妥当性を第三者に検証して頂く機会として、論文等で技術の詳細を公開することも重要視しています。
高専に進学された理由をお聞かせください。
ゲームが好きでプログラミングやAI に興味を持っていました。両親の影響で医療の仕事にも興味がありましたが、人を治すよりもシステムを改善していく方が向いていると考えました。また、普通高校に行くより面白そうだということから、高専を選びました。
高専出身で進学などの際に有利だった点はありますか。
大学への編入試験で複数の国立大学を併願できる点は高専生ならではの有利な点です。編入後も、専門科目の履修、卒業研究、そして修士課程という流れにモチベーションを高く維持したまま取り組めたことは大きなアドバンテージでした。
前職で米国の大学に留学されました。印象に残ることはありましたか。
2015 年から 1 年間、当時の職場の社費留学制度によってコンピューターサイエンスのトップ校の 1 つであるカーネギーメロン大学へ研究留学しましたが、自分の価値観が大きく変わる経験となりました。まず驚いたのは、アメリカのトップ層の学生のレベルの高さです。私と同時期に入学した学生達が高度な論文を短期間に次々と量産していくのをみて、その優秀さや生産性、スキルの違いに衝撃を受けました。また彼らは人間的にも優れていました。世界には様々な人々がいて様々な考え方があることを体感し、視野を広げる必要性に気づきました。
今後の抱負や夢を教えて下さい。
現在は「プライバシーテック」が普及するかどうかの分岐点だと感じています。その中で、ユーザーのデータを安心・安全に活用できるような技術を開発し、より信頼してサービスを使っていただくための一助となればと思います。
高専教育への要望などがあればお聞かせください。
高専の学生はグローバルに活躍する方が少ないと感じます。日本国内市場だけでは限界もありますから、グローバルに活躍できる学生を増やす機会を設けて欲しいと思います。
最後に、高専生へのメッセージを一言お願い致します。
世界は広いです。実際に足を踏み入れてみてわかることもあります。多くの業界で高専生への期待は高く、卒業後に様々な選択肢があります。大学への編入や海外に行くなど、いろんな世界を見ることを考えてみてはどうでしょうか。基礎を重視する高専の優れたカリキュラムにどっぷり浸かった後は、自分のビジョンを持って高専の次の環境に飛び込んでください。

髙橋 翼

たかはし つばさ
木更津高専卒業後、筑波大学に編入。同大大学院博士後期課程修了。NEC入社。カーネギーメロン大学研究留学。2018年LINE入社。データやAI の安心安全な活用など研究。