ご挨拶

高等専門学校制度創設60周年を祝って

日本私立高等専門学校協会 会長

小島 知博

はじめに高専制度創立 60 周年を迎えられますこと、まことにおめでとうございます。
これまでの日本の産業界への貢献、また日本の工学教育の発展に寄与されたことに感謝申し上げます。高専制度は中堅技術者の育成を目的として発足した制度です。その特徴の一つは学校教育と技術者教育を 5 年間で行うことです。時間をかけて教育することが就職率の高さにも表れます。高専はこれまでその時代に求められた技術力に応える教育を行い、それを支えたのが産学連携の取り組みや教員の研究でした。既に取り組みが始まっているSociety5.0 への対応では、情報をベースとして新たな社会で必要とされるさまざまな技術を習得する教育が求められます。

また今後、多くのことがロボットや AI などによる自動化へと進んで行くなかで人間が果たすべき役割を明確化して、明確化された内容に応える教育が必要となります。また SDGs で掲げられた 17項目を実現するために、高専はどのような貢献が可能なのかを模索して、その取り組みを明らかにすることになります。住みよい地球環境を未来に残すために多くの企業が果たすべき目標と実施内容を掲げるなかで、高等教育機関である高専は実施される工学教育、研究を通して学校として果たすべき目標を掲げ、実現するための取り組みが求められています。また社会における女性の活躍が注目されています。

しかしながら内閣府男女共同参画局(2017 年度データ)が示したデータでは専門分野別女子学生の割合が学部では 44%ですが、工学分野は 15%です。各高専は工学を学ぶ女子学生の増加に取り組んでいます。より多くの女性が工学知識や技術を身に付けて社会で活躍できるように、各校が女子学生の学びやすい環境を整え、企業は働きやすい環境を実現することの必要性を感じます。

また日本の人口の 3 分の 1 が 65 歳以上の高齢者になることで引き起こすさまざまな問題を 2030 年問題としています。この 2030 年問題の一つで、日本社会のインフラに大きな影響を与える問題は教育機関にも関係しています。さまざまな分野でのマンパワー不足といった労働生産性の確保の問題は、働くために必要な技術をしっかりと身に付けた学生を社会に送り出す責任を教育に携わる者は負っていることを意識する必要があります。多くの若者が工学に興味を持ち、学生の学ぶ意欲を引き出すための工夫が求められていることをあらためて実感した次第です。

私立高専に関しては、少子化が加速する社会にあって 3 校は存続のためにさらなる経営努力が求められています。私立高専の安定的な学校経営のためには、学納金や補助金以外からの支援が必要です。その支援元は、高専が位置する地域全体であることが望ましいと考えます。地域の活性化に寄与するのであれば、行政、企業から私立高専への財政的な援助も可能となります。地域貢献・地域と共に発展していく学校をこれからも目指します。高専教育の益々の発展を祈念してお祝いのことばと致します。