ご挨拶
グローバル時代における
高専の躍進に向けて
全国公立高等専門学校協会 会長
末永 清冬
高等専門学校制度の創設から 60 周年を迎えましたこと、心よりお慶び申しあげます。
また、この間ご指導を賜ってきました文部科学省高等教育局、ならびに全国の高等専門学校の教職員各位および関係団体各位のご尽力に衷心よりお礼申しあげます。
制度創設以来、高等専門学校は 5 年間の一貫教育を通じて数多くの技術者を養成してまいりました。公立高専も、東京、大阪、神戸と各校の特色を生かしながら、それぞれの地域における人材の育成と産業の振興に寄与するために、教育研究活動を積極的に進めてきたところです。
近年、世界は急速なグローバル化の進展とともに、AI、IoT、スマートフォンといった最先端技術の利便性は、特定の先進国の人々だけではなく、世界中の人々が享受しています。さらに感染症などが驚異的に拡大する中で様々な遠隔情報通信技術が急速に拡大・定着し、先端科学技術は世界中の人々の社会経済活動から切り離せないものとなっています。
こうした変化の中で、科学技術分野で我が国が世界に占める地位は、残念ながら昭和、平成と比べて低下してきたと言わざるを得ません。我が国が今後、グローバル社会の中で、再びその地位を高めていくためには、より高度な科学技術教育を受け、加えてイノベーティブな思考のできるエンジニアの輩出が不可欠です。
このような情勢のもとで、高等専門学校に求められる人材育成も変容してきています。
2018 年 11 月の中央教育審議会答申「2040 年に向けた高等教育のグランドデザイン」において、高等専門学校については「新たな産業を牽引する人材育成の強化、大学との連携など高専教育の高度化、日本型高等専門学校制度の海外展開と一体的に我が国の高専教育の国際化を進めていくことにより、高等専門学校の教育の質を高めていくことが重要」とされており、世界に目を向けることが重視されています。
2007 年の学校教育法等改正によって公立高専の設置者に公立大学法人が加えられ、東京都、大阪府では公立大学法人への移行が進み、残る神戸市においても 2023 年度には公立大学法人への移行が予定されています。移行後の各公立高専では、設置者の判断で各校の特色に応じた運営を行い、活動の幅を広げています。今後は、国際化を大きな柱の一つとして、さらに教育の質を高めていき、大都市に設置された高専として産業界のニーズに応えつつ、我が国のものづくりを牽引するとともに、世界を視野に入れた人材育成を目指していきたいと考えています。
60 周年を迎えた 2022 年現在、世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっており、教育研究活動も大きな制約を受けざるを得ない状況となっています。私たち公立高専も、全力でこの厄災を乗り越えるとともに、環境変化に順応するための数々の変革を進めながら、高専で学んだ学生たちが各方面で躍動し、世界に誇れる人材となっていけるよう、新たな時代の創造拠点に向けて躍進してまいります。